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堺 利彦(さかい としひこ、明治3年11月25日(1871年1月15日) - 昭和8年(1933年)1月23日)は、日本の社会主義者・思想家・歴史家・著述家・小説家。号は枯川、別名は、貝塚渋六。
本文内容見本
7 私の母
堺利彦
私の母、名は琴《こと》、志津野《しづの》氏、父より二つの年下で、父に取っては後添えであった。父の初めの妻は小石氏で、私の長兄平太郎を残して死んだ。そのあとに私の母が来て、私の次兄 乙槌《おとつち》と私とを生んだ。私の母が私を生んだのが四十二歳の時、兄を生んだのが三十八歳の時だったはずだから、思うに、母は三十六、七歳の時、堺家にとついだものだろう。
かように母はずいぶんの晩婚であった。それには理由がある。もっとも、そんなことは、私が大人《おとな》になってから独りで自然に考えついたことで、誰に話を聞いたのでもなく、また少年の頃は全く何の気もつかずにいたことである。母は甚だしいジャモクエであった。その頃の人としては、「キンカ上品、ジャモ柔和」というコトワザがあった位で、一通りのジャモなら一向問題にならなかったのだが、母のジャモはかなりひどかった。鼻の穴が片方はほとんど塞がっており、鼻筋は全く平らに押しつぶされていた。女としてそういう顔容《かおかたち》になった以上、まず嫁入りは六かしいはずである。ただ、私の父が女房に死なれて貧乏世帯に子供をかかえて当惑した時、そこにほぼ双方の境遇が平均したものと考えられる。その外にどういう事情があったのか、私は少しも知らない。何にもせよ、母の晩婚の理由がその容貌上の大弱点にあったことは確かだと思う。しかし、そういう差引算用の結婚が必ずしも夫婦の愛を害するものではなかった。またそういう見苦しい晩婚の女の腹から、二人の立派な(!)男の子が生れるのに、何らの差支えがなかった。またその生れた子供が、母に懐《なつ》き、母にすがり、母を慕い、母を愛するのに、その母の醜い容貌が何らの妨げにもならなかった。実際、醜いと感じたことすらなかった。
しかしこういうことがあった。ある日、私が鳥わなの見廻りか何かに行って来ると、内には母がたった一人で炬燵《こたつ》にあたっていた。その顔がよほど変に、私に見えた。白毛《しらが》まじりの髪が乱れかかっているところなど、物凄いような気がした。もしかこれが、狸か何かが来て母を喰い殺して、その代りに化けているのではないかと、私は思った。しかし母がやがて笑いを含んで話しはじめると、そんな怪しみなど勿論すぐ消えてしまった。私としては、若い美しい母などというものは、ついぞ考えたこともなかった。
母は平仮名《ひらがな》以外、ほとんど文字というものを書いたことがなかった。しかし耳学問はかなりに出来ていた。里方の志津野家が少し学問系統の家であったのと、三十幾つまで「行かず後家」の境遇にあったのとのためだろう、浄瑠璃とか、草双紙《くさぞうし》とか、軍談とかいうような物には、大ぶん聞きかじりで通じていた。私らを教訓する時、よく浄瑠璃の文句が引き言にされていた。そういう意味から言えば、私らは、父の方よりも、母の方からヨリ多く教育されていた。
母はまた、憐みぶかい性質であった。
代表作品
赤旗事件の回顧
面白き二個の広告随筆
獄中生活
貧を記す
婦人の天職
私の父
私の母
名作速読朗読文庫vol.586堺 利彦全集読上機能付きProfessional版
vol 件数 作家名 タイトル カテゴリー/文字数
586 1.0 堺 利彦 赤旗事件の回顧 随筆 5698
586 2.0 堺 利彦 面白き二個の広告随筆 1205
586 3.0 堺 利彦 獄中生活 随筆 15266
586 4.0 堺 利彦 貧を記す 随筆 1365
586 5.0 堺 利彦 婦人の天職 随筆 1798
586 6.0 堺 利彦 私の父 随筆 5949
586 7.0 堺 利彦 私の母 随筆 5585
名作速読朗読文庫とは
名作速読朗読文庫は、読書の喜びを多くの人に知って戴くための 聞いても読んでも楽しめる文庫です
視覚障害者の方もご利用できる音声でも聞こえるシステムが附属しています
速読能力開発ツールも付属し、これを使うと だれでも本を読むスピードは速くなり、脳が短時間で多くの情報を処理する速読能力がつきます
名作は多くの人生の縮図がはいっており、多くの本を読むことは 一生の財産となります
特徴
簡単に速読が身につく読書能力開発ツールが附属しています
目がご不自由な方には 自動音声で読んでくれますので重宝します
寝ていても読書ができます 耳で聞くと、記憶に残り楽しい余韻があります
他を寄せ付けない圧倒的なボリュームページと多人数でつかえる高機能設定です
日本・世界の童話から古典まで 不朽の一流名作文学集を集大成、
小学生から一般成人まで だれでも すぐ ご利用可、
むつかしい漢字がわからなくてもどんどん読み進めれます
誰でも読書量が劇的に増加します!
□ただ聞くだけ
□文学の内容量の大小から選択可
□完了した読書量を数値でグラフ化
□現在の読書スピードを数値化
□設備は必要なし PC設置不要、ネット環境不要
読みは 機械による自動読みです 読みに誤りがある場合はご連絡をいただけば、可能な限り、修正いたします
更新作業をすれば、正しい読みとなります
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Android 4.1以降の環境のすべてに動作確認を保証しているわけではありません
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堺 利彦(さかい としひこ、明治3年11月25日(1871年1月15日) - 昭和8年(1933年)1月23日)は、日本の社会主義者・思想家・歴史家・著述家・小説家。号は枯川、別名は、貝塚渋六。
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7 私の母
堺利彦
私の母、名は琴《こと》、志津野《しづの》氏、父より二つの年下で、父に取っては後添えであった。父の初めの妻は小石氏で、私の長兄平太郎を残して死んだ。そのあとに私の母が来て、私の次兄 乙槌《おとつち》と私とを生んだ。私の母が私を生んだのが四十二歳の時、兄を生んだのが三十八歳の時だったはずだから、思うに、母は三十六、七歳の時、堺家にとついだものだろう。
かように母はずいぶんの晩婚であった。それには理由がある。もっとも、そんなことは、私が大人《おとな》になってから独りで自然に考えついたことで、誰に話を聞いたのでもなく、また少年の頃は全く何の気もつかずにいたことである。母は甚だしいジャモクエであった。その頃の人としては、「キンカ上品、ジャモ柔和」というコトワザがあった位で、一通りのジャモなら一向問題にならなかったのだが、母のジャモはかなりひどかった。鼻の穴が片方はほとんど塞がっており、鼻筋は全く平らに押しつぶされていた。女としてそういう顔容《かおかたち》になった以上、まず嫁入りは六かしいはずである。ただ、私の父が女房に死なれて貧乏世帯に子供をかかえて当惑した時、そこにほぼ双方の境遇が平均したものと考えられる。その外にどういう事情があったのか、私は少しも知らない。何にもせよ、母の晩婚の理由がその容貌上の大弱点にあったことは確かだと思う。しかし、そういう差引算用の結婚が必ずしも夫婦の愛を害するものではなかった。またそういう見苦しい晩婚の女の腹から、二人の立派な(!)男の子が生れるのに、何らの差支えがなかった。またその生れた子供が、母に懐《なつ》き、母にすがり、母を慕い、母を愛するのに、その母の醜い容貌が何らの妨げにもならなかった。実際、醜いと感じたことすらなかった。
しかしこういうことがあった。ある日、私が鳥わなの見廻りか何かに行って来ると、内には母がたった一人で炬燵《こたつ》にあたっていた。その顔がよほど変に、私に見えた。白毛《しらが》まじりの髪が乱れかかっているところなど、物凄いような気がした。もしかこれが、狸か何かが来て母を喰い殺して、その代りに化けているのではないかと、私は思った。しかし母がやがて笑いを含んで話しはじめると、そんな怪しみなど勿論すぐ消えてしまった。私としては、若い美しい母などというものは、ついぞ考えたこともなかった。
母は平仮名《ひらがな》以外、ほとんど文字というものを書いたことがなかった。しかし耳学問はかなりに出来ていた。里方の志津野家が少し学問系統の家であったのと、三十幾つまで「行かず後家」の境遇にあったのとのためだろう、浄瑠璃とか、草双紙《くさぞうし》とか、軍談とかいうような物には、大ぶん聞きかじりで通じていた。私らを教訓する時、よく浄瑠璃の文句が引き言にされていた。そういう意味から言えば、私らは、父の方よりも、母の方からヨリ多く教育されていた。
母はまた、憐みぶかい性質であった。
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獄中生活
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私の父
私の母
名作速読朗読文庫vol.586堺 利彦全集読上機能付きProfessional版
vol 件数 作家名 タイトル カテゴリー/文字数
586 1.0 堺 利彦 赤旗事件の回顧 随筆 5698
586 2.0 堺 利彦 面白き二個の広告随筆 1205
586 3.0 堺 利彦 獄中生活 随筆 15266
586 4.0 堺 利彦 貧を記す 随筆 1365
586 5.0 堺 利彦 婦人の天職 随筆 1798
586 6.0 堺 利彦 私の父 随筆 5949
586 7.0 堺 利彦 私の母 随筆 5585
名作速読朗読文庫とは
名作速読朗読文庫は、読書の喜びを多くの人に知って戴くための 聞いても読んでも楽しめる文庫です
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名作は多くの人生の縮図がはいっており、多くの本を読むことは 一生の財産となります
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